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イラストレーターはゲーム会社に就職しにくいのか?

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こちらのまとめを読み同じような悩みの方にアドバイスが出来ればと思い、記事にしました。

■私の立ち位置

20年以上の経験があるゲーム開発者。

プログラマ出身ですが、ディレクターやプロデューサーも経験してますので中途デザイナの採用も担当したことがあります。

あと学生レベルであればデザイナーでも一次審査くらいはしちゃいますね。

ざっと見てデザインの専門の人に投げるのですが、大体私の意見と同じといってもらえることが多いです。

デザインの人が忙しい時はプログラマもプランナもデザイナも私がまとめてみることがあります。

■イラストレーターはゲーム会社に就職しにくい?

結論だけ言うとイラストしか描けない人はどれだけうまくても採用されないことが多いです。

上記のまとめだとコミュニケーション能力云々が書かれていますが、コミュニケーション能力があっても採用しないですよ。

逆にコミュニケーション能力が大してなくても、ゲーム開発で必要な実務能力があれば喜んで採用します。

ゲーム会社なんて常に人材不足なんで、一定の能力を有していれば未経験者でもコミュニケーション能力が低くても採用されるものです。

■一定の能力とは

ここが重要なのですが、中途であれ新卒であれ採用されない人のほとんどはデザイナーとしての能力不足です。

大手で仕事しているとき新卒で採用される子たちは、ほぼ美大出身の子たちでした。

なので美大に入れる能力がない人はそもそもスタートラインに立てていません。

※ちなみにいうと有名美大の人でもガンガンに落ちていますよ。

また今は中堅デベロッパーにいるのですが、それでも各専門学校でトップクラスの子しか採用しません。

イメージ的には

・専門学校に入る時点でイラストはとても上手

・専門学校時代に3Dやゲーム制作に必要な知識を得て、それをもとに作品を作っている

というのが最低ライン。そのうえでさらに選考されるものと思ってください。

日本において会社に所属してデザインで生活費を稼ぐというのはそもそも結構高いハードルなんです。

■バリューがあるのと技術があるのは別

私はデザインを決定するときに「バリューがある」という言い方をします。

一般用語ではないので解説しますが、いわゆる価値があるという意味だと思ってください。

twitterなどで絵を投稿した時に高い評価を得るのも、ラノベの表紙などで表紙買いされるような人の絵も「バリューがある」状態です。

「バリューがある」絵を描ける人は多いんですよ。でも必ずしも採用されません。

それはゲーム会社で必要とされる技術がないからです。

■ゲーム会社で必要になる技術とは

こちらの記事を見てみてください。

ゲーム画面のサクラの画像と藤島康介先生のキャラクターデザインの画像の違いがわかりますか?(ゲームパッケージのほうが藤島康介先生の絵です)

声高に言わずとも藤島康介先生のキャラクターデザインは「バリューがある」のです。

特徴的で既存のキャラクターと被らない。何年たっても色あせない。

でもゲーム画面では藤島先生の画像をそのまま使用してないですよね?

それには理由があって、

・複数のキャラクターをわかりやすく区別できるように

・ゲームで使用する表情変化がわかりやすいように

・ゲーム素材としてプログラムの都合に合わせられるように

というようなことを踏まえて作成されているからです。

ゲーム会社で必要になる技術は、藤島康介先生の絵をこのゲーム画面で使用しているようなものに落とし込むことが出来る能力のことを言うのです。

更に言うと社員として採用するのであれば、藤島康介先生の絵だろうと吾峠呼世晴先生の絵だろうと同じようにゲームに使用できるものにできないと駄目です。

それができるということがわかればイラスト担当として採用される可能性は高いかと思います。

言い方を変えると、「得意なことを伸ばすだけでなくどれだけ苦手な表現に取り組んだか」という部分が見られると思ってください。

挑戦していない人はそもそも問題外です。

■バリューがある絵に特化されてるということは

ラノベの表紙を担当されるようなイラストレーターの方は個性的ですよね。

そちらを目指すのであれば自分の好きな描き方、世界観、風合いなどを突き詰めていくのがいいと思います。

ただゲーム会社で就職を目指すのであれば、どんなものにでも対応できる技術力を示す必要があります。

なのでオリジナルのイラストのポートフォリオだけではだめです。

いろんなパターンのイラストがいろんな制約の下でも描ける、ということを示すことが重要です。

イラスト担当だったらSDキャラとかもかけてほしいし、小物アイテム、簡単な背景作成、なんかもやれてほしいかな。

逆にというか、有名イラストレーターの方でもそのあたりが出来ないという人はおそらく採用されません。

オリジナルのバリューのある絵が必要なときって、オリジナルゲームを作る最初のキャラクターを決めるときだけですよね。

そのためだけに人を採用したりはしないのですよ。フリーでお仕事を受けていただける方がたくさんいらっしゃいますから。

■デザイナとグラフィッカ

私はデザイナとグラフィッカは別物だと考えています。

いわゆるゲームプレイ部分で使用する素材を作成するのはグラフィッカ、UIやタイトルロゴなんかを作成するのがデザイナという定義です。

これでも大雑把に分けすぎなくらいなのですが。

デザイナの人は最悪簡単なイラストであっても描けなくても大丈夫です。

ただ

・どこにどんなフォントを使用すると効果的なのか

・見やすい、かっこいいレイアウトがわかっている

ということが出来ないと駄目です。

あくまで会社に所属してゲーム開発を行う、という目的であればイラストすら描けなくても大丈夫なのです。

ただし求められる知識量としては、イラストがうまくなるよりも多くの時間をかける必要があるかもしれません。

■基本は経験者に聞こう

本当に会社に所属したいのであれば実務経験者に聞くといいと思うんですよね。

わたしがここに書いたようなことと似たような話をしてもらえると思います。

どこが足りてて、どこが足りてないかアドバイスしてもらう。

そういう知り合いがいないとしても、いまならネットで突撃したら誰かは回答してくれると思うんですよね。

聞かれて迷惑だ、と思う人もいると思いますが業界のために時間を割いてくれる人も少なくないと思います。

私は会社でアルバイトしていた専門学校や大学生の子たちの就職相談によく乗っています。

私が採用活動の相談に乗るよ、という声をかけて「じゃあお願いします」という子は大概本人たちが望むところに採用されていきましたね。

私が相談に乗った子で一番成功したな、という子は「友達の相談にも乗ってください」と言ってきた子です。

それってその子自身にとっても有用で、自分の相談の時には見えてなかったことがわかったりもするじゃないですか。

そういう積極性を考えると確かにコミュニケーション能力も重要なのかもしれませんね。

■twitterで絵を投稿している人は…

正直企業に就職することを志向している人で、twitterに絵をアップしている人はあんまり評価しないんですよね。

twitterだと得意なものをアップすることを求められません?

かわいい女の子の絵が得意なのであればそれが求められてしまうでしょうし、評価もされるでしょう。

でも企業で就職したい時に必要なのは、苦手な制作物を正しく評価されてそれを直していくことだと思います。

ネットにアップしていくのってそういう活動には向いていないです。

面白みのない苦手なものの練習を延々とアップしているような求道者のような人は評価しますがね。

継続的に他人の評価が欲しい人も、あんまり企業で職業制作者をするのには向いていないと思います。

制作動機は自分の中で作り出せる人のほうがいいですねえ。

あくまで「企業に所属して仕事する」、という話なのでフリーでやられている方とは別の話だと思ってください。

それこそキャラクターデザインなんかはそういったフリーの方にお願いすることが多いわけですから。適材適所というか伸ばす必要のある個所が違うのです。

なので個性が評価されていてそこを伸ばすことに喜びがあるのであれば、フリーでやられた方が幸せではないですかね。

■ハードルが高いからこそ

専門学校の学生さんなんて「上手くて」、「ゲーム開発専門の知識もあって」、尚且つ学校の先生に3年から4年ガミガミ言われてそれでも採用されるかどうかわからない状態です。

それ以上の何かを差し出せるのであれば採用されるのでしょうが、それ以下であれば当然採用はされないでしょうね。

そういう経験を経ていない人が採用されたいのであれば、相当な本気を出さないといけないです。

ありのままの自分のいいところだけを見てもらえて採用されるということは、ほぼないと思ってください。

ただそれだけの人たちがそろって仕事をしているということは、当然現場の仕事は面白いですよ。

ゲーム制作が好きな人が一人でも本気で現場を目指してくれることを望みます。

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