小説「ハケンアニメ!」構成分析(前編)

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元々面白いという話は聞いていました。

読んでみたらこれがまた、本当に面白い!

どれくらい面白いかというと文庫本600ページ以上もあるのに3日で読み終わってしまいました。

もともと読むのは早い方なのですが、それでも先が気になるのでどんどん読み進みます。

アニメだけではなく、コンテンツを作るすべての人たちにお勧めできるお話です!

勇気が出る言葉、元気が出る言葉があるだけでなく、どうなるかハラハラドキドキできます。

と、ここまでべた褒めしたところで、まだ読んでない人は回れ右して読んできてください!

小説として面白いだけではなく、『ハケンアニメ!』は構成が素晴らしい!

これから2回に分けて『ハケンアニメ!』の構成の素晴らしさの話をしたいと思います。

ということはがっつりネタバレするということです。

小説の感想はここまでで、ここからは小説の構成を考える話になります。

もう読んだ人は一緒に構成の素晴らしさを確認しましょう。

まだ読んでいない人は読んでから戻ってきてください!

ストーリーがあるクリエイティブをやっている人には必ずためになると思います!

■ 『ハケンアニメ!』 構成について

漫画にしても小説にしても、作る際には構成が必要だということを言います。

最近は映画も漫画も小説も、構成を気にしてみるようになっています。

それでも、なかなか構成がわからないことが多いのです。

それはそうで、構成がしっかりしていないコンテンツも多いですから。

主人公のキャラクターが良ければ、話の設定が面白ければ、構成が多少悪くても読めてしまいます。

ただ 『ハケンアニメ!』 に関しては構成がしっかりと理解できました。

どういう構成になっているかという部分を書いていきたいと思います。

■ハケンアニメの基本構成

  • 第1章 王子と猛獣使い
  • 第2章 女王様と風見鶏
  • 第3章 軍隊アリと公務員
  • 最終章 この世はサーカス

という4章構成。

第1章は有科香屋子という女性アニメプロデューサー。
第2章は斎藤瞳という女性アニメ監督。
第3章は並澤和奈という原画家。

3名の女性クリエーターの話。それぞれにキーとなる男性も出てきますが主人公はこの3名。

それぞれの第1章、第2章で別の章の主人公が少しずつ顔を出していき、第3章の後半で3名が集合。3名ともそれなりの出番があります。

■第1章 王子と猛獣使いの構成について

つかみの第1章のお話がいいですね。

3章の中で一番面白いと思います。ここで面白いと思ってもらえるかどうかが重要なので、この構成は良いと思います。

簡単に展開を説明すると、

・有科香屋子というアニメプロデューサーが王子千晴というアニメ監督の作品が好きになる
・念願かなって有科香屋子は王子千晴とアニメを作ることができるようになる
・でも序盤で王子千晴は制作途中で失踪している
・王子千晴が返ってくる

という流れです。

失踪した、という部分を本当の序盤に持ってきています。

これで読者にどうなるのか、という興味を持たせています。

で失踪している間に王子千晴が行ってきた制作のこだわり部分が説明されていきます。

・シナリオが難航している
・お望みの人気作家に書いてもらったが「作家性が強すぎる」ということで却下
・じゃあもう自分で書くしかない

というところで失踪します。

普通に失踪だと面白くないですよね。

シナリオが遅れている、さらに遅れるようなこと自ら選択する、そして失踪、というところで読者のストレスがマッハになっていきます。

王子千晴へのヘイトが高まって、有科香屋子への応援の気持ちがわくわけです。

もうこうなったら作者の掌の上ですよ。

で、有科香屋子もさっさと関係各社に失踪したことを説明すればいいのに、言えないでいます。

読者としたらさっさと言っちゃえよ、という感じです。

言い出すのが先送りになればなるほど窮地に追い込まれていって、いよいよ言わないといけない、というところで王子千晴が戻ってきます。

しかも、シナリオを全部アップした状態で!

ストレスが一気に緩和されるし、有科香屋子へはよかったねという感情が起こり、王子千晴への評価も一気に上がります。

この構成は設定を変えればどんなものにでも使えるのではないでしょうか?

失踪じゃなくて、病欠、でもいいわけです。

こういった構成のテンプレートをいくつもっているかが、面白い作品を狙って作れるかどうかにかかってくるのだと思います。

■王子千晴について

そして制作発表会、王子千晴のインタビュー、という展開で第1章は終了です。

構成もさることながら王子千晴のキャラクター、というかセリフが抜群です。

これだけ好き勝手やっていると嫌われておしまいになっちゃったりもするのですが、ちゃんと好かれるようなキャラクターとして成り立っています。

好かれるための仕組みとして、

・人間臭さを出している。
・弱みを見せている。
・責任感を持っているところも見せる

どれも効果的ですよね。

下記のセリフは特に好きなもので「弱み」を見せつつ「責任感」を持っていることを理解させます。

引用
「あのさぁ、まだ存在しないゼロのものを、たとえそれが頭の中にあるにしろ一から立ち上げて形にしなきゃならないプレッシャーってわかる?俺がやらないと何も進まないっていうこの状況。簡単にやれているように見えるかもしれないけど、簡単にやってるように見えてんだろーなってことまでがストレスになるわけ。できるかどうかなんていつもわからないよ。」

いやあ、そうですよね。私もいつもこう考えています。簡単にやるためにどれだけ苦労してるのかわかってるのか。時間だけかけている人を大変ですねとか言ってんじゃねーよ、とか思っちゃいますね。

でもまあ、実際はどんな仕事でも責任者の人は少なからずこういう思いは抱えているわけで、それが共感を生むのです。

引用
「脚本とか絵コンテは、地道に机に向かうことでしか進まないよ。どんだけ嫌でも、飽きても、派手さがなくても、そこに座り続けてずっと紙やパソコンと向き合うしかない。」

これもそうですよね。ちゃんと寝たほうが、とか簡単にいう人がいますが、ほんとに作り上げたいものができるかどうかの瀬戸際のところでなんかちゃんと眠れません。

まあ、炎尾先生のように「敢えて寝る!」ということもありますが、完成させるためにはできるまでやり続けるしかないのです。

引用
「一つのタイトルが始まれば、その人の時間を三年近くもらうんだよ。俺がやりたいものを形にするっていうそれだけのために、その人の人生を預かるんだ。そのことを考えない日はないよ。」

開発を進めるうえで合理的に判断できないのが、こういうことがあるからです。

私なんかは「そのためには必ず完成させないと」と思うんですが、人それぞれですよね。

責任感のある人の言葉だと思います。

引用
「暗くも不幸せでもなく。-現実を生き抜く力の一部として俺のアニメを見ることを選んでくれる人たちがいるなら、俺はその子たちのことが自分の兄弟みたいに愛おしい。」

アナウンサーの「現実逃避にアニメを見るのか?」というという質問に対しての返答です。

いやあ気持ちいいねえ。自分は自分のゲームに時間を使ってもらうことを肯定します。

高校三年間ゲームばっかりで何が不幸ですか。高校三年間野球ばっかりやっている人だっているでしょう。

それぞれが本当に好きでやっているのなら、同価値ですよ。

私はそれに選ばれて恥ずかしくないような作品を作るだけです。

どれもこれも力のあるセリフばかりですよね。

王子千晴 は前半あんまり出てこないのに、この章の後半は名セリフばかりです。

1章の構成は鉄板ではあるのですが、この王子千晴のような魅力的なキャラクターでないと効果的に受け止められないのかもですね。

■本日はここまで

明日第2章以降の構成解説をアップしていきます!

こうご期待!

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