小山田いく先生の名著『すくらっぷブック』に「39本のえんぴつ」というお話があります。
twitterで記事が流れてきて、ああちょうど今くらいの時期の話だなと懐かしくなりました。
高校入試当日の朝の友田和則さんと山崎洋子さん。
— トウえもん (@touemonnyaaaa) March 15, 2020
詳しくは小山田いく先生の『すくらっぷ・ブック』第95話「39本のえんぴつ」をご愛読くださいませませ。 pic.twitter.com/i63wW1l2fz
お話の内容と自分の家庭教師時代の思い出を書いておきます。
■39本のえんぴつ概要
お話の内容としては、
・主人公のクラス担任の正木先生が高校受験に向かう生徒みんなに鉛筆を1本ずつ渡す
・高校受験で力いっぱいのぞめたと思えたなら返しに来るように言う
・みんなが試験当日返しに来て、生徒全員39本分そろう
というお話です。
正木先生が職員室とかで待つのではなく、みんなは試験を受けているんだからと寒い野原で待っているというところが泣かせます。
今だと少しうっとおしがられるかもですね。
当時は先生と生徒の間の関係は今よりも濃厚でしたからね。
とても良い話だと思います。
高校受験というのは学生さんにとって最初の関門であることが多いです。
そんな時に「これを返すために頑張ろう」という思いがあると、力を発揮しやすいと思います。
小山田先生は、どうやってこれ思いつかれたのでしょうか。
■私の家庭教師時代
大学生のころ家庭教師をしていました。
合計4人ですかね。
二人は受験生で、そんなに問題もなく希望の高校が受かりました。
一人はどれだけ教えても全然勉強しない子でした。
結局親御さんがいざとなったら寄付金を積んでいる高校に入れるから、もう教えてもらわなくてもいいといわれ終了しました。
最後の一人ですが、この子が本当に手がかかる子でした。
きれいにオール1(笑)
中学1年生の2学期くらいから見ていたのですが、掛け算ができない、アルファベットが書けない、という状態でした。
大体中学の数学で1を取るような子は四則演算ができません。
特に掛け算でつまずいている子が多い。
掛け算は小学二年生でやりますから。そこから算数が全然わからないまま5年たっていたりするわけです。
■どのように教えたか
この子は不良だったわけではありません。いえば宿題はやるような子でした。
最初は数学と英語だけに絞りました。とはいえ掛け算、割り算、アルファベットを書けるようにする、というところからです。
数学は道のりが長かったですね。掛け算ができるようになっても数学の点数には跳ね返ってきませんでしたから。
親御さんのご理解もあって徐々にできるようになって中学2年に上がるころには「2」が取れるようになりました。
英語は全くダメでした。アルファベットは書けるようになったのですが、単語が全然覚えられません。
2年に入ったところで英語の成績を上げるのは断念。
英語は捨ててその他の科目を勉強するようになりました。
それで2年の終わりには5教科、英語以外はオール2にすることができました。
『ドラゴン桜』ならもっと成果が出るのでしょうが、週2回の家庭教師で最初の状態からだとこれが精一杯でしたね。
■帰ってきたえんぴつ
受験時も見てあげたかったのですが、自分の都合があって3年生の最初に家庭教師を辞めることになります。
出来れば受験結果だけ教えてほしいとだけ伝えておきました。
なかなか思ったところは難しいだろうというところと、すでに家庭教師を辞めている人に連絡は来ないかな、とあまり期待はしていませんでした。
結局受験が終わったころはがきが来ました。
公立の農業高校に受かったとのことです。
彼の最初の成績を考えると、すごいことです。
お母さんのコメントで「先生のおかげだったと言っていた」ということが書かれていました。
いやあうれしかったですね。
かなり厳しく指導したこともあるのですが、最後にそういう感想に至ってくれたのであれば何よりです。
社会人になった今でも他人に教えることは多く、報われることは少ないです。
この間の東京ゲームショウで、10年くらい前当人が新人の頃に教えていた人が声をかけてくれました。
今話題になっているゲーム商品を作成したとのこと。とてもそんなことができるようになるとは思っていなかったので意外でした。
プラスこの子にもかなり厳しくしていたので、相手から声をかけてくれたことが意外でした。
えんぴつは返ってくるものなんですね。これからも頑張って伝えられることは伝えていきたいと思います。