CGWORLD 2020年7月号の感想を書いていきます。
■第1特集:CG業界のリモートワーク事情
業界で急速に進んでいるリモートワーク。今回はリモートワークに必要な基礎知識やツールの検証など、役立つ情報をまとめて緊急特集! 今を乗り切る知恵と技術を考える。
ということです。
外部にデザインを発注する際の参考にもなりそうです!
・1 Basic Knowledge リモートワークの基礎知識
会社のPCを自宅に送るとフローティングライセンスで困るというのは忘れないほうがいい情報。
これ解決できたソフトは伸びるのではないかなあ。
リモートだとコミュニケーションロスが発生する、というのはそもそもリモートじゃなくても発生しているんですよね。
ロスに気が付きやすいだけで。
でも気が付いて改善していくほうが結果コミュニケーションの質は上がっていく気がするので、リモートのほうがコミュニケーションはうまくいくようになると思います。
ゼロクライアントという言葉は知らなかったなあ。その他は大体理解している内容でした。
・2 Review リモートデスクトップソフトレビュー
リモートデスクトップソフトのレビューというのはいいですね。
大概の人はどれか一つを使用しているだけだと思うので。
ただ個人的にはシンテレワーククライアントで問題ないと思うので、それも紹介してほしかったかな。
・3 Shotgun×RemoteWork リモートワークにおけるShotgunの活用
Shotgunは「同じようなメンバー」で「同じようなデザイン作業」を長期間行うのであればいいんですがねえ。
ゲームだと状況が常に変わるので、個人的にはデメリットの方が目立つかな。
新しい使い方、になれる時間がかかるのでそれよりももっと単純なツールのほうがいいかと。
全く使用したことがない人が入れ替わりで入ってくることが多いという、特殊な環境の話ではあるのですが。
・4 Column エンタメ業界にこそオススメしたい「空間会議システム」
便利なようには思うのですが、根本が間違っているのかと。
Slackで送る文章を考えるのに時間が掛かるくらいなら、という話が出ていますがそこに時間をかけないようにするべきなんだと思いますね。
「ツールに合わせた対応ができない、だから都合に合いそうなツールを探そう」というのはきりがないかと。
ちゃんとツールに合わせた対応ができるようにするべきなんですよねえ。
それができないようだと最終的なコンテンツはできている組織より劣ったものになる確率が高いですよ。
・5 Interview 「バーチャルマーケット 4」主催者インタビュー
これも微妙なんですよね。
MMOが流行ったときにみんなバーチャルモールやセカンドライフみたいなの作りたがったんですよね。
でみんな爆死。
なんでもできるツール、というのは結局何にも1番になっていないツールなんですよ。
多機能なコミュニケーションツールがありますが、結局twitterが今でも覇権を取っているわけで。
多機能なツールは特化されたツールに勝てないと思います。
■第2特集:実写版『映像研には手を出すな!』
・Strategy アニメではなく、実写として描く! VFXチームの挑戦
一見すごそうな話に見えるのですが、ゲーム中の3Dムービーやポリデモはこうやって制作されています。
面倒でも資金がかかっても、最初に絵コンテが書ける人に絵コンテを描いてもらったかどうかで出来が左右されます。
この特集だと「破綻させないレイアウト」の紹介になっていますが、本来はそれから一歩進んで「破綻なくかつ見栄えがいいレイアウト」を実現させている絵コンテを用意しているところが多いです。
やはりそういうのはちゃんとしたアニメーターさんにかなわないんですよね。
私がやるならプロの絵コンテを描けるアニメーターさんにちゃんとした費用で発注します。
・Line Drawing 漫画原作&アニメ版の線画表現を3DCGを駆使して現実世界に再現
この項を読んで思ったのは「いい時代になったなあ」ということ。
私が若いころの映画のCGは一発勝負で作成したみたいなものが多くて、頑張ったけどかっこ悪い、というものが多かった。
しょうがないのです、ちゃんとした検証をするのに必要な時間も費用も技術者も足りていなかったので。
今はそのあたりは安価に用意できるのですから、ちゃんと検証しないと駄目ですよね。
・Photorealistic Mechanism 3DCGの強みを最大限に活かしたフォトリアルなメカ表現
どれもモデリング素晴らしい!
でもそもそものデザインがいいんですよね。
原作にはワクワクするようなデザインがたくさんあります。
アニメーターの方でそういうものを作れる人多いですよねえ。
なんでなんでしょう。
ロジカルという所ではなく感覚的なところをちゃんと鍛えているからなのかなあ。
花を見てきれいと思って、それを絵として記憶できている人とそうでない人の差のように思います。
・Environment 画力のあるロケ地をベースにファンタジックな世界観を創出
時間とお金がないところでどうやって見栄えをよくしているのか、という工夫が多いですね。
日本でコンテンツを作る時にはどうしてもそちら側で頑張らないといけないので、見るべきところが多いです。
破綻しないような仕組みを作る、うまく使いまわす、実際の素材を利用する、どれも基本ですがそのやり方次第で費用をぐっと抑えることが出来ます。
その方法がちゃんと紹介されています。
・The Movie さらにスケールアップ! 期待が高まる劇場版のVFX
これも「汚し」の度合いで時間経過を表現する、というゲームでも参考になる工夫が紹介されています。
「最初からそれを想定してモデリングする」、「それがわかるようなカメラアングルを入れる」ということまで考えられて作られているのでしょうね。同じような時間、手間で作成していても出来が全然変わると思います。
たまに時間が足りないとこぼすクリエーターがいますが、大体は必要な工夫の手順を持っていないというか勉強していないというか考えてもいないだとか、できなくて当たり前な状況を自分で作っているだけなんですよねえ。
メイキング全般に関して、どれも工夫がすごいですね。
優秀なクリエーターが多く参加されているように思います。
『映像研には手を出すな!』というコンテンツが持つわくわく感で人が集まっているように思うんですよね。
そう考えるとやっぱり重要なのは0を1にする部分なんですよねえ。
■特別企画&連載記事
・HOT STUFF アニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』
モデリング悪くないのにどうしてもいまいち古臭い絵だなあ。
ポスプロにもっと力入れないとというか、ポスプロを見越した作り方をしないといけないんでしょうね。
企画のスタートが2015年で2020年公開というのは、しょうがないことと言いながらスピード感がなさすぎかと。
個人映像作家がガンガン作品アップしている状況ですからね。
今までのやり方で続けている人たちは一気に取り残されていくと思います。
・NHKスペシャル『列島誕生 ジオ・ジャパン2』
出来がいいですね。
リアルなようでリアルでない。
自分たちが得意な表現に寄せていると思います。
見栄えが良い悪いの判断は「自分たちの得意な表現を理解している」、「それを実現させるためのツールの使い方、採用する技術の選定」がちゃんとできているところのように思いますね。
・Game Graphics Studio
おお、このファン(この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ)の特集だ!
個人的にこのゲームのデザインは今年観たゲームの中で一番だと思っています。
キャラデザというかキャラ絵が素晴らしいし、それをしっかり動かしているし。
とにかくアクアがかわいく描けているし、かわいらしく動いているし。
本当に悔しい、こういうのは私が作らないといけなかったのに!と思っています。
モーション付けのために「即興劇」を勉強したり3Dキャラクターアニメーしょんのセミナーに参加したりしていたのか。
私もアニメの絵コンテなどを見て勉強したりしてはいるのですが、もっと手を広げていかないと駄目ですね。
このままだと取り残されてしまう。
シエロのスプライト衣装の対応は見事だな。
私だと割り切ってあきらめてしまっているかも。
SDキャラのSpineの設定も紹介されている。
このゲーム本当にこのSDキャラクターの動きが見事。
商材に直接かかわってくるところでちゃんとそこが良い表現になっているので売り上げにつながっていると思う。
株式会社Artnerの協力を得た、と書いてあるな。ちゃんとこの名前も覚えておいて自分が制作する際には仕事をお願いしたい。
カットインアニメの絵コンテ社内制作なのか。
絶対アニメーターに依頼していると思ったけど。
社内にゆしゅううなデザイナーがいてちゃんと監修しているんだろうなあ。
失礼だけどサムザップさんはそんなにヒット飛ばしていないイメージなのに、なんでこんな優秀な人たちを集められているんだろう。
本当にこの特集は個人的に大刺さりしました。
・アニメCGの現場
「オルターカード・カーボン:リスリーブド」の紹介。
私の好みと全然あっておらず、何か語るのは失礼だと思いますのでノーコメント。
・世界大諸説史
何かこの特集は毎回意図がわからないなあ。
好きとか嫌いとかは置いておいて、このCGをCGWORLDで見せられてどう思ってもらおうとしているのか不明。
・Phenomenal Things
こういう表現をしたいときはこういうモデリングをするとよい、という部分で参考になる。
水の泡はこう作るといいのか。
人体のラインもきれい。
・画龍点睛
アジサイの画像が見事。
レイアウトや色合いに関して、デザインがちゃんとわかる人には参考になるんでしょうね。
そういった部分は勉強して気にするようにはしているのですが、なかなか身につかないなあ。
お、ここでシン・シンテレワークシステムが紹介されている。前の特集と別れているのはわかりにくいですが「ゼネラリストになりたい」というシリーズでの取り上げなので仕方ないかな。
・アニメーションスタイル
今回はオリンピック競技編ということでソフトボールのピッチングとバトミントンのシャトル打ち。
この連載の感想は毎回同じようなものになるのだけれども、毎回参考になります。
単純に動画を分割すればいいということではなく、特徴的なところを原画的に抜き出す、ポーズとして見栄えがいいところを抜き出す、ということを認識する訓練になります。
ソフトボールの手首を返すところなんて、確かにそこが特徴的だと思いますね。
リアルであることとリアルであるように見えることは少し違います。
通常の動きと違うものは脳が違和感として反応するし、それが抜き出せているか抜き出せていないかで印象が変わります。
コマ割り的に事実とちがっても特徴的なところを抜き出せていればそれっぽく見えるし、逆はそれっぽく見えないんですよね。
足の接地の仕方とか、知識として持っていないとスルーしがちです。
・ACADEMIC meets INDUSTRY
ぬいぐるみとか着物とかは確かにCGで表すノウハウが足りないかもしれませんね。
それをちゃんと表現しています、というコンテンツはちゃんと訴求ポイントになるかと。
独特な質感の敵キャラクターを作りたい、という要望があったときに独特な表現の引き出しがあればその派生で変わったものが作れることは多いです。