書評:書くことについて

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今回はスティーブン・キングの「書くことについて」の書評をおこなっていきます。

スティーブン・キング好きですねえ。モダンホラーが好きなんですよ。

「スタントバイミー」を高校時代に読んでかなり興奮したのを覚えています。

多少マイナーですが「痩せゆく男」とかもお勧めです。

そんなスティーブン・キングが小説を書くときにどのようなことを考えているのか、というものをつづったのが本書となります。

■履歴書

前半はスティーブン・キングのそれまでの人生について書いてありますね。

幸せそのものとは程遠い、どちらかというと悲惨な経験が多いです。

この本なのですが、段落がわかりやすく分けられていません。そもそも目次がないですね。

自叙伝のようになっているのが恥ずかしいからなのか、何か別の意図があるからなのか。

割と淡々とスティーブン・キングの人生と、執筆がどのように行われてきたかが記載されています。

出世作のキャリーは書きやすかった話ではなく、才能ではなく書き続けることが重要であり、それの大切さや工夫がかいてあります。

何か特別の才能や運があったわけではなく、ただ生活をしつつ書き続けるということで作家になったということを知ってほしかったのではないですかね。

実際この前半部分は、面白話がありながらも退屈な内容が多いです。何しろ脚色のない売れない作家の話になっていますから。

ただ最後になってこの文章にぐっと深みが出ますので是非一読を。

ノウハウとしては「書くこととはー」との表題の部分にウサギと8の数字にまつわることが書いてあります。

確かに8の数字が一番印象深かった。

何を言っているのかわからないと思いますが、ぜひ読んでみてください。

こういった工夫の積み重ねが、人に物を伝える技術なんだろうと思います。

■道具箱

スティーブン・キングのおじさんの道具箱の話を例に取り、文章にも自分の道具を用意しておくべきだという話をしています。具体的なマテリアルではなく、書き方ですね。

・語彙使えないものを使うな

文法文法がダメなら伝わらないが、簡単な文法しか使わなくても文章は作れるはずである

受動態や副詞を乱用しないように行っているが、本当に言いたいことはわかりにくい表現はやめようということですね。

・会話の地の文で副詞を使うな。

私はよくやっちゃう。「彼は声高に叫んだ!」みたいな文章ですね。〇〇は言った。ばっかりだとよくないと思っちゃうんですが。

・主題を書いて説明を書く。

まずは基本を大事にしましょう。そう言ったことがやはり一番大切だとスティーブンキングも言っているわけです。

■書くことについて

より具体的に、どのように自分が書いているかという記述が続きます。

・たくさんの本を読み、書くこと。良い本も悪い本もいろいろなことを教えてくれる。最初は真似でも何もないところからは何も生まれない。

読書や執筆よりテレビを見たいのなら真剣に作家を目指しているわけではない、というストイックさはさすが。私も生活している間中ゲーム作制作のことを考えていない時はないです。子育てしている時でも、デートしていた時も。努力が苦痛になった時はやめる時ですよね。

ブログをやっている大きな理由として、今までのやり方だと能力が上がらなくなってきたのでアウトプットする方法を試している感じです。

才能があると普通の人よりも努力できるというのはよくわかります。そりゃ他人より進むんだから楽しいですよね。それに対して社畜とかいう人がいますが、そういう人に振り回されるほどバカらしいことはないです。

・たくさん書け

どれくらいかという問いかけにいくらでもという答えを出す。

1998年当時35作で多作と言われているスティーブンキングは少ないと思っているよう。寡作な人に対してもっとかけよ、と思っている様子。正直な人だというか、書く人のためになる本を書いているのだから自分が思っていることをちゃんと書かないとと思っているようです。誠実な人なんですね。

一作は三ヶ月以内に仕上げたい。バトルランナーは一週間で仕上げたというのも良い情報。こういう物差しを教えてくれるのはありがたい。

時間が経つと作品と疎遠になるというが、私は企画は寝かしちゃいます。で使うときに出してきてもう一度磨き直してから出す感じです。その方が冷静に自分の作品をあ評価できるからで、疎遠になっている状況。スティーブン・キングは自分の子供に自信があるタイプなんでしょうね。私はしっかり育てたか確認してから世に出したいのです。

・1日目標二千字、三ヶ月で十八万語

邪魔が入らないところで書く。

・何を書くのか、書きたいものを。

知っているもの。ジャンルは自分が好きなものを。

計算で売れるものは書けない。といっていますね。マーケティング主導の捜索は好みではない様子。

・小説は三つの要素から成り立っている。

ストーリーをAB地点からB地点へ運び、最終的にZ地点まで持っていく叙述。
読者にリアリティを感じさせる描写、そして登場人物に命を吹き込む会話である。

言い切れるところが素晴らしい。これがスティーブンキングの武器なのでしょう。

ストーリーは自然にできていく、作家はストーリーに成長の場を与えそれを文字にすること。狂ってるというなら言え。

よくわかる。私も大まかにゲームは作る。他人の意見入れるし入れる余地を作る。それで自分の世界が崩れるのではなく、伸びるのだ。自分が考えてないことが起きるから面白い。

おそらくそれをキャラクーの動きに求めているのでしょう。

私は複数の人物を窮地に立たせ彼がどうやって脱出するのか見守っているだけだ。

というのは良い表現だなあと思います。

自分の作品でプロットを立ててから執筆した作品の紹介をしていますが、基本立てないで書いているようです。

どちらかというと、興味深いシチュエーションだけでてきたら書き始める、というタイプでプロットが不要な状態に持っていく方が重要だと考えているみたいですね。

殺人事件か誘拐事件があって、それを隠しているかのような人が別のトラブルに巻き込まれる、みたいなのが良いわけだね。

読者が物語の世界に浸っているという実感を得るためには、登場人物の身体的特徴よりも、背景や雰囲気を伝えることの方がずっと重要である。

まあ当たり前ですが、スティーブン・キングは感性が豊かなんでしょうね。

例えばちょっと前に見た花に関して、何かを感じているか感じていないかが重要ということです。それがあるから適切な雰囲気を伝えることができるわけです。

ありきたりな比喩を使うな。

洞窟のように暗い。はありきたり。暗いものに対してどう考えるか、何か特別なものを見たときに何かの比喩に使えないかと考えると良いのかな。

会話はキャラクターがわかるように書くと、より深い設定ができる。

この説明でわかるのはスティーブン・キングは他人の小説に突っ込みながら読んでいるということですね。

会話を作るときに大切なのは誠実さと、本当のことを書くこと

・人物造形

勘所は二つ。周囲の人物の行動に注意を払うこと。そして見たことを正直に書くこと。

あなたの周りで落ち着きのない人だと判断した人がいるだろう。何故そう感じたのかを覚えておく。で、それを書く。

・テーマについて

後になってわかるもの。なんで自分はそれを重要だと思って書こうとし始めたのかを考えれば出てくるだろう。

「3月のライオン」1巻のあとがきで羽海野先生が似たような話をしています。読んでみると参考になるかと思います。

ここで「ザ・スタンド」でスティーブン・キングが直面した行き詰まりについて解説されています。プロット優先にしないとこういうことが起こる、と。

スティーブンキングは大体三つのテーマで書いていると説明しています。こういったものを自覚するかどうかというのは大事。

若いうちは何作も書いて、その中からなんでそれを書いたのかを考えていけば、自然と見つかる気がしますね。

・見直しについて

基本二稿、ブラッシュアップで三稿。

・公式

二次稿= 一次稿マイナス10%

・リサーチについて

あまり重要視していない。調べないといけないことは調べないとくらい。大事なのはストーリーの方。

・エージェントについて

投稿について一番大切なのはプレゼンテーション。例がかいてあるし、実質的なことの大切さがかいてある。

日本だと編集者なんですかね?アメリカはエージェントがいないとうまくいかない様子。

■総評として

この本ですが、若い人にはオススメしないです。ある程度創作をしてきたひとむけの本かと思います。

単純なノウハウ集ではないですが、わかりやすくするために嘘を書いたりはしていないと思います。

あと結局、書いてみたら自分の創作は直感によるところが大きいという吐露ですね。

最後の方で明かされるのですが、スティーブン・キングはこの本の執筆中にひどい交通事故にあっています。

改めてそこで自分が執筆するということについて向き合ったのではないでしょうか。

世界的な天才と称される人であっても、苦しみもがきながら創作をしている。それがわかるだけでもこの本を読んだ意味がありますね。

クリエーターの10年選手にはもれなくお勧めいたします。

10年以下は、10年たつまで待ちましょう!なぜなら待った方がより面白くこの本が読めるからです。

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