今回は「アニメ制作者たちの方法」の書評をします!
アニメーターさんのお仕事という部分で興味があったため購入しました。もう少し技術的な「どのように作成しているのか」という内容かと思ったのですが、概論的な内容だったので最初はがっかり。
ただ途中まで読んで、これ買って良かったなと思いました。
この10年くらいでどのようにアニメの制作手法が変化してきたかという部分がわかりましたね。これくらいアニメが変わっているのに、あまりゲームの現場は変わっていない、というところで危機感を覚えました。
■撮影に関して
・「効果」というものに注目が集まっている。
・after effectを使用することで絵作りとして自分の思ったイメージに近づける。
・デジタルで最も可能性が広がったのが撮影セクション。
というような話が出ています。もともとアニメの絵作りは、ゲームみたいなエフェクトを入れないイメージがあったんですよね。アングルとか動きで勝負!みたいな。
ただ現状は最終的な絵作りに力が入ってきているようですね。確かにデジタル処理になれば入れやすいですし、現状ツールも充実してきましたしね。
新海誠さんの出現も大きかったのかな。そんなような話もこの本の中に出てきています。
10年くらい前の開発の時にフリーのデザイナーの方がいて、新海さんと同じように個人で映像を作られている方でした。お金が無くなるとフリーの仕事を受けて、たまるとひたすら映像制作をする生活に戻るとのこと。
「ほしのこえ」の登場が2002年なんですが、上記の話が2006年くらいだったかな。今でこそ超有名な新海監督ですが、すでにその頃からフォロワーがいたんです。
■web系アニメーター
Flashなどでアニメを作っていた人たちの話が出てきてます。
イメージ的には そういった人たちは昔ながらのアニメーターの人たちからしたら異端になるんだと思います。それでもネット上で活躍している個人作家さんから、原画に抜擢される、ということがあるようです。
これに限らず、この本の中に出てくるクリエーターの人はヒットメーカーでありながら最新の技術をどんどん取り入れていることがわかります。
既に一定の評価を得ている人はあんまり冒険をしたがらないものです。それで評価が下がってしまうこともありますからね。
ただそうでない人たちがアニメ業界にはたくさんいるようです。ゲームとは違ってアニメは挑戦回数が多くなりますからね。
ゲームだとある程度の大作だと3年周期位ですが、新海さんや細田さんの映画でも2年周期。テレビシリーズならもう少し早く回せる人もいるでしょう。
ゲームの方がもっと冒険するべきなんです。
この本を読むとそういった危機感に向かい合うことができますね。
あとこの記事を書いている時に見つけた下記のページがとても参考になりました。
■絵作りについて
用語だけでは解りにくかったので、アニメの撮影処理を実際の使用例を見せつつまとめてみた(GIFあり) - うさペンの館ここにある技術は理解し、ゲームを作るうえでも効果的に使いこなせないといけないでしょうね。非デザイナーの人たちは「今ある絵はなんでその構図なのか?」という部分の理解が弱いと思っています。
それはそのまま表現力が弱いゲームが出ているということにつながっているかと思います。何らかの形でそれは改善していく必要がありますね。
・そのゲームで伝えたいことは何なのか?
・そのための手法を持っているか?
・それはゲームでこそ伝えやすいことなのか?
そのあたりが考えられないというのであれば、クリエーターとして限界を迎えているということなんです。
いわゆるヒットメーカーといわれる人たちと仕事をしてきましたが、そういう人たちは技術やスキルがあるのではなく、ないからと言ってあきらめないんですよ
某有名なムービーシーンが多いタイトルをやっていたことがあるのですが、ムービーシーンを作るに当たり全編をアニメーターの人に絵コンテを描いてもらっていました。
構図を考えるのが難しいのであれば、そういったやり方で外注することができます。
良くする手法があれば調べて取り入れる。この本はそういった努力を惜しまないクリエーターの人たちを紹介しています。
アニメはこんなにも進歩し続けているんだ、ということが理解できます
同程度の進歩を生み出せないと、ゲームはアニメからお客さんをとられてしまうのではないでしょうか
あと一つ、私はアニメというよりアニメのつくり方が好きでそういった本を読むのですが下記が一番お勧めですね。
出版された直後に読んだのでもう17年経ちますか。結構なボリュームがありますし、当時新人クリエーターだった私はこれを読むのにすごく時間がかかった記憶があります。
ただこの本を読んだおかげで、動きを付けるプログラムだったり、作業指示だったりで自信をもって行うことができました。良質な読書はその後20年くらいの開発の役に立つわけですよ。
これからもそういった経験が増えますように。