twitterで予告していた、水着剣豪七色勝負イベントの感想を書きます。
【追記・更新】【期間限定】「見参! ラスベガス御前試合~水着剣豪七色勝負!」開催! | Fate/Grand Order 公式サイトCEDECの記事を書いていたらイベント終了から少し間が開いてしまいましたね。
一応私はソーシャルゲームのプロデューサーなどもやっておりました。 そういった視点から今回のイベントの感想を書きたいと思いますので、 参考になりましたら幸いです。
FGOはもう3年くらいやっていますかね。レベルが140なのでそのあたりからはまり度を察してもらえればと。
■今回のイベント内容に関して
率直な感想として、運営視点からすると非常に よくできているイベントだったのではないかなと思います。
ここ最近のFGOの課題はユーザーの滞在時間をいかに増やすかというところだと予想しています。滞在時間を増やすということはハタから見るとそんなに重要なのかなぁというところにつながるかと思いますが、滞在時間が長いからこそ課金につながるというのが私の見方です。
滞在時間が長くなるから、どうせ長くプレイするのであれば快適に過ごしたいということで課金に繋がるという流れだと思っています。
最近の施策やイベントは、滞在時間を長くさせるための施策が重視されたものだと思いますね。
この辺はまたそのうち細かく書きたいなーとは思います。
滞在時間を長くすると一言で書く分には簡単なのですが、ただ単に長くするだけだとユーザーの不快感にもつながります。 最近はいわゆるスカスカシステム によって、強い相手であっても簡単に攻略できてしまうという側面が出てきました。これは非常に問題になる状態なのです。 先程も言った通り強い敵が倒されてしまうというところが問題なのではなく滞在時間が減ってしまうというところが問題になるのです。
その辺をFGOは 一番の売りであるシナリオ長くすることで補おうとしていたと思うのですが、この施策が思ったよりユーザーのプレイの快適さからは離れてしまう状況を産んでいたかと思います。
端的にイベントの最初のシナリオが長いのでシナリオ読み始めるまでにAPを消費することができず、 思ったようにイベントを進めることができずイライラするといった状況を生み出していました。
ソーシャルゲームはどうしても隙間時間にプレイするユーザーが多いので好きな時にAPが消費できるような状況にないと、ユーザーのストレスを生んでしまう状況になります。
またもう一つの問題がさっさとクリアしてしまうユーザーの状況です。 こういったユーザーはコアユーザーでもあるので早めにゲームが終わってしまうという状況は、 イベントの終盤に盛り上がってない印象を産んでしまいます。
こちらを回避するためにイベント終盤にしか 効率の良いイベントポイントを 獲得できないようにしていたのですが、こちらはこちらで序盤に有利になるガチャが回らないという状況になってしまっていたかと思います。
今回FGOのイベントでは序盤からポイントを獲得しなければならないという状況である一方で、後半ではイベントポイントとは別途のQPを集めなくてはいけない 仕様になっていました。
QP自体はコアユーザーからするといくらあっても問題のないポイントですし、 前半ではQPが取りにくい一方、後半ではQPがとりやすくなる概念礼装を ユーザーが獲得できるような状況にしていて、自然と前半も後半も盛り上がってる状況に持っていけたかと思います。
問題があるとすれば攻略サイトを読まないとそれが非常にわかりにくい状況になっていたかというところかと思います。
また別の問題として水着サーヴァントを獲得できるガチャが二回に分けられて実施していたのですがサーバント成長させるための種火が足りず水着サーヴァントを獲得したにもかかわらずイベントに使うことができないという状況も産んでしまいました。
この辺は次回以降の課題という感じかなと思います。
またQPを獲得できやすくするというのは、ユーザーがやることがなくなってしまうという状況産んだりもしますので毎回毎回これを行うということは難しいように思います。
わたしが運営していたソーシャルゲームは、それなりのコアユーザー(しっかりやっているユーザー)とランキングのトップにいるユーザーでイベントの獲得ポイントに100倍の差がありました。
それくらい差があるユーザー同士を乖離させないようにするのが、ソーシャルゲーム運営をうまくいかせるための肝なんですよね。
FGOのイベントはそのあたりがしっかり作ってあるので、非常に参考になります。
私のほうの戦果としては全部のミッションをクリアしアイテムも全部回収したので非常に満足が行くイベントでした。
ただ水着北斎を獲得した影響で、 セイバーのランスロットは使わなくなるのだろうなぁと思います
■FGO(Fate Grand Order)のゲームシステムについて
ソーシャルゲームを作る人にはFGOのシステムが参考になるよ、という話をします。
そうするとシナリオのところに注目されがちなんですが、個人的にはゲームそのもののシステムが秀逸だと思っています。
そのあたり理解してもらえないことが多いので、その部分を説明していこうかと思います。
FGOの戦闘のゲームコンセプトはいかにユーザーに飽きさせないように するかというところに注力されているかと思います。
三体のサーヴァントが サーヴァントごとに別途に設定されている五枚のフダを持ち、その15枚がランダムに3回に分けて出される関係で同じような戦闘結果になることがほぼありません。
この同じ結果になることがないということが非常に重要なのです。 同じ結果になるということは同じ操作をすればよいということになり、同じ操作をすれば良いということを繰り返していくとはゲームをプレイすることではなくて作業しているということにつながっていきます。 ゲームをプレイさせているというのは非常にいい状態なのですが、これが作業のようになるととたんにゲームがつまらなくなります。
ユーザーはいい サーヴァントをとることで、プレイをできるだけ楽に進めたいと思います。 このプレイを楽にしたいと編成を極限まで思った通りにすると、そのあとの作業が作業に近い行動になっていてしまうのです。
FGOはこの最終形ならないようにするというところも非常に工夫されています
こちらはサーヴァントのクラスがたくさん用意されているという所と 非常にたくさんの概念礼装 が用意されておりその組み合わせが多岐にわたるところで 最適解が分かりにくくまた実現しにくくなっています。
サーヴァントは数を増やしにくくある一方、概念礼装は 増やしやすい作りになっています。 そしてガチャではサーヴァントは獲得しにくく、概念礼装は取りやすい形になっています。
サーヴァントのクラスを増やすということは分かりにくくなるというところと表裏一体なので、他のゲームはなかなか実装しにくいのです。ただFGOは元々の世界観からそういったものが実装されていたことという部分と、徐々にクラスを増やしていったというところ、その増やす部分でそれぞれ優秀なシナリオ合わせて公開するということができたため、他のゲームよりはユーザーに浸透しやすい形で提供できるかと思います
このゲームデザインが非常に秀逸だなぁと思います。 サーヴァントの宝具スキップをしたいという要望がよく話題に上りますが、こちらを実装してしまうと戦闘がより作業に近くなるので実装しないのは当然かと思います。
ゲーム滞在時間も減ってしまいますしね。
■ゲーム運営初期の費用に関して
まあ、ただゲームデザイン的には非常にリスキーな賭けをしたという部分はあるかと思います。 サーヴァント一体大の作るのに非常にコストがかかります。 アニメーション作るだけでなくシナリオ作るだけでなく声優さんの音声収録もみると一体あたりのコストはどれくらいかかるか分かりません。
以下ざっとですが、1サーヴァントあたりにかかる費用を見積もってみました。
・プログラマ 1人月(アニメーション) 100万円
・プログラマ 1人月(スキル効果作成) 100万円
・デザイナ 0.5人月(素材作成) 50万円
・デザイナ 0.5人月(アニメーション作成) 50万円
・デザイナ 0.5人月(2D立ち絵) 50万円
・イラスト 0.5人月(イラスト) 70万円
初期画像20万、3段階差分、それぞれ10万、最終降臨画像20万
・音声収録 50万
声優出演料:30万、スタジオ費用、音響監督費用20万
声優さんの金額はまとめて何人か収録すること前提の金額です。
まあ各声優さんで費用は違うと思いますが、見積もりとしてはこんな感じかと。
一番費用が見えないシナリオに関しては未定とさせてください。自分で作るゲームなら1キャラクター100万くらいで見積もりますが、以前のFGOのシナリオ作成にかける期間を見る限り、そんなものではすまなさそうです。
※シナリオ作成に関しては以下の記事が参考になります。
マフィア梶田が切り込む「Fate/Grand Order」。奈須きのこが追求する理想と,やがて迎える終焉のカタルシスあくまで私の試算ですが、ざっと470万ですか。ウェブソーシャルのカードゲームのキャラ追加ならイラスト10万のエンジニア2人日、デザイナ1人日、プランナー1人日の15万くらいの費用で収まっているかと思いますので30倍以上の費用になりますかね。
ネイティブアプリは金額がかかるとはいえ、あのFGOが出た時期にこれくらいの追加費用が掛かるゲームを作ろうとしたのは、ちょっと信じられないですね。
売れたからよかったですが、売り上げが出なかった時のことを考えると非常に怖いプロジェクトではあります。ただ最近流行っているバンドリであったり7つの大罪であったり売れなかったら困るなぁ、というくらい初期投資をかけたプロジェクトでなければもはやユーザーに受け入れられることはないのかもしれません。
FGOに関してはもう少し語りたいことがありますので、またどこかのタイミングで言及するかと思います。