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CEDEC2020レポート:『プリンセスコネクトRe:Dive』が目指した、アニメRPGとしてのゲーム演出制作事例 ~テレビアニメとゲーム演出、二つの制作手法を融合して生まれたカットインアニメーション~

投稿日:

講演者
工藤 瑛子

序盤は講演内容の書き起こし、最後と※部分に個人的な見解を記載しています!

■アニメとゲームのメディアミックス作品における課題

アニメ制作とゲーム制作は。制作体制が異なる

アニメ
数カ月~半年前からスケジュールを確保
作業の後戻りが難しい

ゲーム
短期かつ継続的に新しい演出が必要
演出の調整が適宜入るので作業の後戻りが起こる場合がある

アニメ演出をどのように取り入れたか?

・アニメ演出をゲームに入れ込むときの課題と解決法
・手書きとパーツアニメ、二つの手法をミックスした制作手法とフロー
・アニメ演出とSDキャラの演出に統一感を出すためのノウハウ

目次
1.プリコネのカットインとは
2.作業工程とノウハウ
3.カットイン表現における新たな試み
4.まとめ

■プリコネのカットインとは

役割①
キャラクターの魅力を最大限に見せる

表情やしぐさをアニメという強みを生かして表現
そのキャラクターをもっと好きになってもらう

役割②
バトルシーンを2秒で盛り上げる

2秒間のキャラPVがバトルにメリハリを生む
SD演出とシームレスなテンポ感でつながることで没入感を高める

役割③
アニメとゲームをつなぐ

バトルの最中にもアニメが流れることで、アニメRPGを強調
ストーリーアニメと連動した演出で世界観をつなぐ

※やりたいことがはっきりしていてすごい。よくこんなに言語化できますね

・プリコネのカットインアニメはパーツアニメで作られている

パーツアニメとは

・なぜパーツアニメで作ったの?

最初は手描きアニメで作っていた。
試作した演出はほぼ完成していた

SD演出と合わせたときにテンポ感が合わない
TVアニメの手法とゲーム仕様の間に壁があり動きの滑らかさに違和感があった

※後何気にアニメは動いているといいけど止め絵だとつらいことが多いです。精度の高い画像パーツの集合で作成したほうがきれいにはなる。アニメは流れていく(同じ画面はほぼ出ない)が、ゲームは同じ画面が何度も出る
版権物でイラスト作成を頼むと作画監督経験レベルの人でも絵が似ていないことが多い。細かく直さないとゲームでは使えない
作ったアニメを捨てることが出来たのもすごい

気持ちのいいバトルのテンポはプリコネの命
このテンポのずれをどうにかできないか

・前作のユニオンバーストに注目

SDと同じ方法で作られている
・SD、カットイン共にAdobe Flashで制作
・カットインが入っても、テンポ感が崩れない

少ない枚数の絵で動かしている
・制作のスピードが上がり、クオリティの向上にコストを割ける

・新たに生まれたメリット

制作体制の内製化

後戻りのリカバリができるようになった

①必要な絵の枚数が減った

TVアニメ
原画と原画の間に、中割の絵が必要
必要枚数はおおよそ16枚以上

パーツアニメ
原画をパーツ分けしたものだけでOK
必要枚数は多くて7枚

社内にアニメーターをアサインして原画制作

②パーツアニメのノウハウと知見

・開発タイトルにパーツアニメを用いたものが多い
・クオリティを高めるためのノウハウが豊富
・パーツアニメの手法をアニメーターと共有

カットインアニメを作ることに特化したチーム

・二つの業界の知見共有

アニメ業界の制作体制への理解
・ゲーム開発と違い、トライアンドエラーに対する難しさ
・一つの演出にかかわる人数の規模からうかがえる認識共有の仕方

ゲーム制作におけるノウハウの浸透
・パーツが動くことを前提とした絵作り
・ゲーム素材であることを念頭に置いた作り方の共有

社内で制作がほぼ完結

・円滑な意思疎通の体制でのスピードとクオリティが向上
・後戻りが発生した時のリカバリーが早くなった
・お互いの業界への理解が深まった

プリコネにおけるカットインとは|まとめ

キャラの魅力を存分に発揮して、バトルを盛り上げる要素
アニメRPGという世界観を強調・つなぐ役割
バトルのテンポ感を損なわないためパーツアニメで制作

■作業工程とノウハウ

コンテ

制作事例:ネネカ

プランナーから提示された演出プランをもとにUB全体の共通イメージを合わせる

・どこからどこまでをカットインで魅せるか
・SDの演出とどう関連性を持たせるか
・UB全体を通して、どんな色感、方向性にするか

コンテ(ビデオコンテ)は3案以上出し、一番いいものを採用する

共通のイメージを確立することでUBを一つの世界観にまとめられる

・コンテはUBの雰囲気の道しるべになるのでとても重要
・ビデオコンテにすることで実際の完成形を全員がイメージしやすい

作画

原画枚数が少ないことのメリット

細部へのこだわりとスピードの両立ができる

・普通のアニメよりも必要な枚数が少ない
・1枚ごとに、ブラッシュアップの時間を多くとれる

パーツ分け
各関節髪の毛その他前後しそうな部分で分けると10~20パーツになる
ここでパーツ分けをするので、後でこのパーツが足りないなどの後戻りが減る

原画枚数を節約することでクオリティを高く保ったまま量産する

・一枚の絵に注力する時間が取れるため
・社内監修で意思疎通がしやすくキャラの魅力を崩さない

アニメーション

①取り込み直後
 動きのつながり無し
②全体の動きを追加
 全体のカメラワークをつける
 大体の絵のつながりと動画の尺が決まる
③パーツアニメを追加

※実際はちゃんとつながっているわけではないが細かいパーツが動いているので気にならない

エフェクト

キャラクター性のあるエフェクト
クリスタルとコピー能力から連想し、万華鏡のようなエフェクトにした

手書きエフェクトも多く使用している
2,3フレームに1枚の間隔で書いているものをアフターエフェクト内でパペットツールや変形ツールなどを用いて形を整えて、場合によっては保管して滑らかに見えるようにする

3Dライクなパーティクル表現はSSとして取り入れて、できるだけメインのエフェクトは手描きにしている

軌跡が目に残るように画面に長くとどまる
散らしやちぎれといった表現があると見栄えがよい

アニメーション工程で大切なこと

①わかりやすさとつながりを意識する
バトルの進行方向や視線誘導を考えて制作
②よりTVアニメのような見た目を演出する
1コマずつキーを釣ってけれんみを出したり、手書きエフェクトを使用
③キャラクター性を重視した演出をする

撮影

※実際のアニメでもアフターエフェクトは活用されています

作業工程|まとめ

カットインとSDが、一体となった演出を目指す

キーとなる原画に注力してクオリティとスピードを両立

手描きアニメっぽさを追求した動きとエフェクト

キャラクターの個性があふれる演出づくり

■カットイン表現における新たな試み

従来のカットインよりも豪華に!よりアニメらしく!

SDはプログラム演出は動画
→全部を動画に変更

大きなスケール感
・背景要素もかかわる演出

外連味のあるカメラワーク
・空間を縦横無尽に使ったエフェクト

撮影作業にてエフェクトの仕上げと羽根の特殊処理

課題

①バトルのスピード感と尺の長さの折り合い
・演出の要素が多い分尺を取ってしまう
・プリコネの良さであるバトルのテンポ感を損なわない工夫が必要

→テンポ感を重視してカットチェンジをAfterEffectで細かく調整

②システムや仕様面での障害
・カットインオフのシステムが使えない
・シャドウと呼ばれる敵バージョンのカットインをどうするか

→一連の演出の中で霧の良いところから再生をする
 シャドウ用動画を別で用意する

新しい試み|まとめ

今までにない規模間で従来よりも豪華に

SDとエフェクトも一体になった演出で新しい見せ方

アニメとゲームが同じ演出であることでつながりをより強調

■まとめ

カットインの役割

キャラクターの魅力を最大限に見せる
クオリティに妥協しない体制を作るため、手法そのものを見直してこだわりのある演出を制作

バトルシーンを”2秒”で盛り上げる
SDとかっとんアニメが同じパーツアニメであることでテンポの良いメリハリの利いたアニメーション表現ができる

アニメとゲームをつなぐ
SDと一体になった演出でアニメとゲームのメディアミックスに成功

バトル演出してSDと一体感を出すと同時に「カットインアニメは2秒間の”キャラPV”

キャラの魅力や個性を発揮することが大事

制作手法はあくまで表現したいことを実現する手段

そのために最適な手法を模索していくのが私たちの役目です。

プリコネのカットインアニメの目標はキャラクターの魅力をユーザーに届けること

すべてはキャラクターが輝くために!

■感想

すばらしい講演でした。

良いものはよいコンセプトから生まれるといういい例ですね。

「プリコネのカットインアニメの目標はキャラクターの魅力をユーザーに届けること」

という方針が言語化されているのとそうでないのとでは雲泥の差があります。

よくいうユーザー体験というのは「ユーザーにどう感じさせたいのか」ということであり、「プリコネのカットインアニメの目標はキャラクターの魅力をユーザーに届けること」というのはそれがしっかりと実現されています。

手法があるからよいアニメーションが出来ているのではなく、コンセプトがちゃんとしているからそれを実現するための手法が適切なものになっていくわけですね。

Cygameは今回のCEDEC資料の作り方や動画のまとめ方が統一されています。

おそらくどの講演も会社として監修していますね。

ちょっと気になったのはCyllista Game Engineで紹介されていたようなツールがこちらでは使われていなさそうなところ。

同じ会社なのに全然別っぽいですね。

ユニオンバーストが運営していた当時CA系の会社にいたのでAmebaプラットフォームに関してはよく見ていました。

正直モバゲやGREEに比べて集客に苦戦していてあまりいいプラットフォームではなかったんです。

「ガールフレンド(仮)」が売れてただけだったなあ。

そこで苦戦して割と早く終わってたんですよね。

ああ、Cygameさんでもうまくいかないときは行かないんだなあ、と思ていたらいつの間にか復活していてこんなに売れてびっくりです。

売れるゲームと売れないゲームって紙一重なんですよね。

改めてそんなことを思いました。

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