「恋物語」の構成分析を行います!
通常の書評をする予定だったのですが、すごく面白くかつ構成が素晴らしかったので構成分析にします。
アニメのセカンドシーズンを締めくくるこの作品、どのような構成になっているのでしょうか?
構成分析の性質上、かなりのネタバレをしますのでご注意を!
序盤は書評っぽく、最後にそれを踏まえて構成分析を行います!
■語り部は貝木
前巻でひたぎが語り部を担当する、といっていたので楽しみにしていたのですよ。
暦の次に好きなのがひたぎなので。ひたぎ語り部は話が面白そうだなと。
ただふたを開けてみれば、なんと貝木が語り部に!
これは全く予想ができていませんでした。
キャラクターとしてはいいと思うのですが、ひたぎほど思い入れがないので若干がっかり。
そして序盤の回りくどい言い回しが繰り返されるところを見るに、大丈夫かいなと思ったのは事実です。
ただ結果的に貝木で大正解ですね。
マンガだと『ブラック・ラグーン』、小説なら伊坂幸太郎さんが好きな方は特にお勧めです!
ノリがハードボイルドなんですよね。好みにもよると思いますが私は大好きです!
■ここまでの前振り
話を締めくくるのに大小いくつか課題がある状況です。
・千石撫子問題
・受験、卒業問題
この問題を恋物語で解決するのか、できるのか?というのが私の一番の注目ポイントでした。
千石撫子問題はスカッとした解決はもう無理じゃないのかなあ、と思っていました。
もう撫子は怪奇のキャラクターでいくのではないかと。
そう思わざるを得ないくらい「囮物語」で好き勝手やってしまっていますからね。
「恋物語」ではひたぎの話を中心に「受験、卒業問題」問題を片付けておわるのではないかな、というのが私の予想だったのです。
それがいい感じに裏切られましたね、どちらの問題もしっかりと片付いています。
それを実現するためのキーが貝木になるわけです。
■千石撫子問題
ざっくり説明すると千石撫子という中学生女子が「囮物語」で蛇の神様になってしまっています。
しかももともと一見おとなしめのキャラクターなのに、かなり攻撃的怪異としな変質を遂げています。
家に帰らず神社に住み着いている状況。
しかもこの話の事件の開始時点から2、3か月経過。女子中学生が3か月も行方不明ならもう死亡していると受け取られますよね。
そういう状況になっているところから大団円に持っていくのはかなりの至難の業です。
いろいろこじれていて暦を卒業の日に殺すつもり。
なので卒業問題ときれいに切り離すことはできなかったりします。
ただ「花物語」で卒業後の暦が書かれていますから、まあ死なないんだろうなというのは読者側がわかっている状況。
だったら「恋物語」で決着ついていなくてもいいよなあ、というテンションであるのも確かでしょう。
■受験、卒業問題
暦が高校卒業後どうなるのか、ひたぎとの関係は?
そのあたりは何気に注目ポイントです。
物語シリーズは予想した展開を裏切っていくスタイルですので、ここまでついた来た読者は何があっても驚きはしないでしょう。
大学受からなくてひたぎと別れました、別の女の子と付き合い始めました、ということになっても別段びっくりということはありません。
結果どうなったということより、今後各キャラクターがどういう関係性で話が進んでいくのか?という部分が気になるのではないでしょうか。
■構成分析
簡単に描くとこんな感じの構成ですね。
①貝木が撫子をだまして解決するを話の主軸とする
②貝木がなんで撫子をだます依頼を受けるのか、ということを読者に納得させるために語り部にして気持ちの動きを示す
③読者には奇をてらった感じで、ひたぎではなく貝木を語り部にしたように見せる
④貝木が撫子の身辺を調査するが、特に必要な情報はないように見せる
⑤貝木が別の誰かにも狙われているような描写を入れる
⑥撫子は特にやりたいことがない考えなしの扱いやすいキャラクターとして認知させ、撫子をだますことが安易なように見せる
⑦撫子はそんなに単純な人物でないことがわかり、蛇が身として大暴れする。④の部分でそれが納得できるような描写が入っている。
⑧実は撫子は漫画家になりたかった、本当にやりたいことがあるキャラクターだというネタ晴らしをする。ここでも④の部分でそれが納得できるような描写が入っている。
⑨貝木が絶体絶命になったところで、暦が解決するのではないかと思わせておいて、暦なんてどうでもいいという解決の着地点に持っていく
⑩話が解決したと思わせて最後貝木が中学生に襲われて終了。⑤のフラグ回収
という構成かと。いやあよくできていますね。別の話このテンプレートでやればなんでも面白くなりそう。
「恋物語」以前の話で予め撫子を暦が好きなだけのキャラクターっぽく見せておいているところがうまくミスリードさせていますね。
ネットで撫子が人気の理由がいまいちよくわからなかったのですが、「恋物語」を読んだ後は納得です。
いやな言い方をすれば気弱なオタクに共感されやすい要素てんこ盛りですよね。
■恋物語のすごいところ
ひたぎが貝木に撫子をだましてもらう、という解決方法を取ったのは言われてみればいい方法なのですがよく思いつきましたね。
読者が予想していた解決方法は、撫子を傷つけずに倒す方法がないかというようなものがメインだと思います。
貝木であればできそうだという部分と、どうやってそれを引き受けさせるかという部分がネックになります。
それを読者に納得させるための貝木の語り部なんですよね。
「鬼物語」で伊豆湖や夢渡が出てきて、撫子の問題を解決するのに役立つような印象を残します。
でもこれはほぼ「恋物語」には影響を与えません。
後は漫画を描いているということを選択したバランス感覚。やっていておかしくなさそうで、ばれると恥ずかしい。子のチョイスもできそうでできないです。
物語シリーズは後々どうなるのか(今回でいうと暦は卒業式に撫子に殺されない)ははっきりしているのに、どんな過程でそうなるのかがわからないようなつくりになっているんですね。
これがあるからあとで予想外の展開になっても、だまされた感や取ってつけた感がなく面白く読むことができます。
貝木はラストで自分が「偽物語」の時に騙された中学生に襲われることになります。
通常であればこの後の話で貝木がでてくると、なんだ死んでなかったのか、と若干の反感を買うことになるのですがすでに「花物語」で無事であることが明かされてしまうためそういった懸念がなくなんですよね。
■セカンドシーズン終了
とまあここで物語シリーズアニメ版のセカンドシーズンまで読み終わったわけですね。
「化物語」の構成分析を書いたの月末ですから結構ハイペースで読み進めてきました。
このシリーズ意外にも読みたい本はあるのでペースは落ちると思いますが、読み続けていくのではないでしょうか。
若干セカンドシーズン分になってから興味のテンションが落ちていたのですが、「恋物語」のようにしっかり伏線を回収してくれるのであれば是非とも読み進めたい感じです!