『ゲームAI技術入門──広大な人工知能の世界を体系的に学ぶ』の書評を行います。
■内容
先日「FINAL FANTASY XV の人工知能 - ゲームAIから見える未来 」の方の書評も行いました。
この本との差異は正直そんなにないですね。
「FINAL FANTASY XV の人工知能 - ゲームAIから見える未来」の方が具体的にゲームと照らし合わせて紹介されているので、わかりやすくはあるかなという風に思います。
ただゲームAIのことを勉強したい、という人であれば「ゲームAI技術入門」のほうがFFXV以外の事例も多く上がっているのでわかりやすいかと。
■本書の良いところ
AI処理を作るうえでの共通言語定義をしているという所ですね。
実際にゲームでAIを作成担当することになった時には、担当部分にかかわる人全員に読んでおいてもらうとよいかと。
メタAI、ナビゲーションAIという定義はすごくよくできていると思います。
AIを作る時にどういう仕組みにするかは好き好きだと思うのですよ。
ただ複数人数で制作するときに、ちゃんと資料が整っていない誰かの理論ベースで作ろうというのはかなり危険です。
独自物を作るとしても、この本の技術ベースにどこを変えるのか、ということを決めて資料を作るとよいかと思います。
■個人的感想
私はPS2規模のシミュレーションゲームの仕様を決めたことがあります。
ゲーム仕様としてはほぼ一人で全仕様を決めていました。
そんなことできるの?といわれるかもしれませんが全仕様決めるほうが楽なんですよ。
わかっていない部分、だれかに作ってもらわないといけない部分があるとそちらの方が大変。
更にプログラムも担当していたので、自分しか知らないというかプログラムを見ないと分からないような仕様もたくさんありました。
逆にプログラムは書かなくていいのでちゃんと仕様書に落としてくれ、と言われていたら間に合っていなかったかも。
そういう経験があるのでAIに関してはそれなりに知識もあるし、一から仕様を考えるにしても自信もあります。
絵で例えるとちゃんと絵が描ける人、描いたことがある人なわけです。
この本そういう人であれば理解できると思うんですよ。
でもそのような知識や経験がない人や、素養がない人はなんのこっちゃと思うかもしれません。
絵の上手な描き方って、ある程度絵が描ける人は見てもわかると思うけどそうでない人は「なんのこっちゃ」という感じだと思います。
そういう危険性はあって、本書を読んだとしても理解できるかどうかは定かではないですね。
素でわかっている人の知識の整理としてはよいのですが。
■それを避けるためには
簡単にでいいのでAIが必要なゲームを作ってみることをお勧めします。
結構考えることが多くて、何をどのように切り出してプログラムに落とすのか、という具体的な作業はなかなか骨が折れます。
ただそれがないとちゃんとAIが組めるようになる、という状態にはならないと思います。
いくら登山の本を読んでもいきなりエベレストに上るのは危険ですよね?
ある程度順を追って登山の経験がないと、エベレストに挑戦するのは危険です。
この本で解説されていることは、ある意味それに近いのですよ。
ゲームAIを作れるようになる、というのは何年かの計画で進めるような作業かと思います。
それを成し遂げるための地図としては現時点で最高峰かと思います。