少年マガジンで化物語が連載されていますね。
気になっていたので小説版を読んでみました。
こちらの構成も興味深かったので記録に残しておきます。
書評というより構成分析ですので、当然ネタバレします。
面白い内容ですので、ぜひ本編を読んでから見てもらえると嬉しいです!
■内容補足
ご存じ西尾維新先生の著作となります。
西尾維新先生は『めだかボックス』の原作者さんでもありますね。
文章量が多い割に読み進めやすい文章を書かれる方だという印象があります。
会話多めだからですかね。
『化物語』自体は2006年に出ていますので、もう15年前の作品となります。
物語シリーズは今でも続いているようですね。
■お話の構成について
小説版は
- 第一話「ひたぎクラブ」
- 第二話「まよいマイマイ」
- 第三話「するがモンキー」
- 第四話「なでこスネイク」
- 第五話「つばさキャット」
という順序で掲載されています。
そして続編の『第零話 こよみヴァンプ(傷物語)』と続いていきます。
物語の時間軸としては
- 第零話 こよみヴァンプ(傷物語)
- 第五話「つばさキャット」の一部
- 第一話「ひたぎクラブ」
- 第二話「まよいマイマイ」
- 第三話「するがモンキー」
- 第四話「なでこスネイク」
- 第五話「つばさキャット」
という順序になります。
話の順序をいじったことによる狙い(あくまで私の予想になりますが)と、効果について書いていきたいと思います。
■知ってるキャラクターのほうに思い入れが出る
キャラクターを立てる上での工夫として
・読者(ユーザー)はより知っているキャラクターのほうに思い入れが深くなることが多い
ということがあります。
知らないキャラクターにはあまり共感できませんよね。
まあ、先に登場していても共感しにくいキャラクターであれば思い入れがわかないこともありますが。
おそらく『物語シリーズ』は阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎをメインに進めたいお話なのでしょう。
まあ、だれをヒロインにするべきなのかということに関しては戦場ヶ原ひたぎで正解だと思いますね。
キャラクターも強いしユニークだし、魅力もあるし。
そう考えたときに一番先に出しておく必要があったのでしょう。
羽川翼や忍野忍の話を先に展開してしまうと、そちらに感情移入する人が出てきますから。
■過去話で期待を持たせる
『化物語』全般を通して、過去の話が断片的に出てきます。
主人公である阿良々木暦がGW中に吸血鬼になっていて、その結果けがなどに対する回復力がアップされていることがあちこちで語られます。
あまり隠すことなく、正し一番気になる忍と阿良々木暦の関係のところは語られない、という展開で自然と忍に対する興味がわくようになっています。
第一話で魅力のある阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎの紹介を行う。
その中で後々読ませたい羽川翼、の情報を出しておく。
第二、三、四話でも羽川翼、忍野忍の情報を出しておき、五話で羽川翼の話を展開、忍野忍は次巻以降のお楽しみになる。
展開としては非常にきれいですね。
阿良々木暦が羽川翼や忍野忍にストレスを与えていく様子なんかも、話数を経るごとに増えていくのがそれとなくわかるようにしているので、第5話の説得力が増しているんですよね。
うまい構成だと思います。
■「まよいマイマイ」に対する効果
阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎの会話のやり取りは面白いですよね。
キャッチボールというかデッドボールというか、あまり戦場ヶ原ひたぎのほうが阿良々木暦の会話を踏まえて話をしない。
それがうまく生きているのが「まよいマイマイ」ですよね。
実は八九寺真宵の姿が戦場ヶ原ひたぎには見えていない、というのが「まよいマイマイ」の一番のポイントになっているのですが、第1話から続けている会話の在り方が、ひたぎに八九寺の姿が見えていなくてもおかしくないような会話の流れを実現しています。
■テンプレート
別の話に転用するならば下記のようなテンプレートになるかと思います。
・第一話
主人公とメインヒロインの話を展開。その話以前にメインヒロイン以外の女性キャラクター(サブヒロインA)とのエピソードが発生していることを示唆。
・第二~四話
主人公とサブヒロインB、C、Dとのエピソードを展開。その際にメインヒロインとの関係性を発展させ、サブヒロインAとの過去エピソードを展開させておく
・第五話
サブヒロインAとのエピソードを展開。この話以前にサブヒロインAではなくメインヒロインを選択する必然性のあるエピソードを展開しておく
というような感じですかね。
まあこれだとわりと『化物語』じゃん、ってわかると思いますのでもう少しひねる必要がありますが。
構成も参考になるのですが、単純に作者さんは阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎの会話が好きなんでしょうね。
ストーリーを獲得にこれだったらいくらでも書ける、という方がそれぞれあるものなんですよ。
それが阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎになるのだと思います。
それをそれが主軸となって、それを生かす形で別の会話も展開できるキャラクターも配置して、それぞれを紹介したのが『化物語』なのかもしれません。
傷物語を読むとまた新しい発見があるような気がしますので、早めに読んでしまいたいと思います!